働き方の多様化が進んだこともあり、「フルリモートワークで地方に移住したい!」と考える人も多くなっています。
しかし、実際に地方移住とフルリモートワークを実現するには、さまざまな準備や心構えが必要です。本記事では、地方移住×フルリモートワークのメリットやデメリット、スタイル、チェックポイント、注意点などを詳しく解説します。
また、実際に地方移住をしながらフルリモートで働いている人3名にインタビューも実施しました。
地方移住×フルリモートワークに興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
総務省による「令和4年度における移住相談に関する調査結果」によると、移住相談窓口が移住相談を受け付けた件数は、2022年時点で約370,300件と、その前の年から約46,300件増加していることが分かっています。
相談件数は年々増加しており、地方移住への関心はかつてないほどに高まっているといえるでしょう。
ただし、日本において、従業員に対してフルリモートワークを認めている企業は、全体のなんと1%という調査結果もあります(Capterra(キャプテラ)による、2024年3月に実施された独自調査)。
また、リモートワークを採用している業種には、やや偏りもあります。
総務省 情報流通行政局が発表している「令和4年 通信利用動向調査報告書(企業編)」によると、リモートワーク(テレワーク)を導入している企業は、情報通信業では97.6%にのぼりますが、運輸業・郵便業では33.0%です。
このような現実を踏まえると、正社員として地方移住しながらフルリモートで働くのは、なかなか難しいのが現状です。
このため、在宅で働きながらフルリモート勤務を実現させている人の多くは、フリーランスで働いたり、エンジニアなどリモートで働きやすい業種を選ぶなどの工夫をしているケースがほとんどといえるでしょう。
自然豊かな環境で暮らしながら働けるとして注目を集めている、地方移住×フルリモートの働き方。どのようなメリットがあるのか解説します。
まずは、都会よりも自然が身近な環境で生活できることです。
国土交通省の資料によれば、目に入る緑の量(緑視率)が多い場所ほど、人は安らぎを感じられるのだとか。
また、樹木は「フィトンチッド」という香り成分を常に放出しています。この物質は、自律神経を安定させてくれるほか、ストレスホルモンを減少させる、呼吸を正常に整えるなどの効果をもたらします。
山や海、川など、豊かな自然に触れ合うことで、心身ともに落ち着いた気持ちで過ごせるようになるでしょう。
通勤の必要がないことも、多くの人がメリットとして挙げるポイントです。毎日の通勤に費やす時間や体力を節約できるだけでなく、電車の混雑や道路の渋滞によるストレスから解放されます。
通勤時間を自分の時間として有効活用できるため、趣味や勉強などに使えるようになります。また、体調が悪い日や悪天候の日でも、無理して出勤する必要がないため、健康管理もしやすくなります。
地方都市は、東京などの大都市と比べて家賃や物価が割安であるケースも少なくありません。
同じ予算でもより広い部屋に住むことができたり、生活コストを抑えられたりするため、金銭的なゆとりが生まれます。その分を貯蓄や投資に回したり、趣味や旅行に使ったりすることもできるでしょう。
育児世帯は、地方移住を考える人も少なくありません。
自然豊かな環境で子供を育てられるだけでなく、通勤時間を削減できるため、家族との時間を大切にできます。また、地方都市では保育園の待機児童問題が少ない傾向にあるため、安心して子育てと仕事を両立できる環境が整っています。
フルリモートワークは、自分の生活スタイルに合わせて柔軟に働くことができるため、ワークライフバランスを実現しやすいのも嬉しいポイントです。仕事の合間に家事や育児を行ったり、趣味の時間を確保したりと、メリハリのある生活を送ることができます。
地方移住とフルリモートワークには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
移住前に、これらのデメリットを理解し、対策を考えておくことが重要です。
地方都市では、公共交通機関が都会ほど発達していない場合があります。バスや電車の本数が少なく、路線も限られているため、車を持っていないと日常の移動に不便を感じるかもしれません。育児世帯は特に、車が必須の地域で、車を持たないと、生活のクオリティが大きく下がるかもしれないことは注意しておきましょう。
また、お酒好きな人も、自分のライフスタイルを実現できそうかチェックしておきましょう。車移動がメインの土地の場合、「フラッと飲み屋に行く」といった余暇の過ごし方は難しくなってしまうでしょう。
子育て中の人は、移住先にどのような教育施設があるのかをチェックしておきましょう。
都会に比べて、地方都市では教育の選択肢が限られている傾向にあります。特に、私立学校や専門学校、大学などの数が少ないため、子供の教育方針に合った学校を見つけるのが難しい場合があります。
また、塾や習い事の選択肢も少ないことが多いため、子供の可能性を広げるための環境づくりに工夫が必要になるかもしれません。
映画館、劇場、美術館、大型ショッピングモールなどの選択肢が限られているため、娯楽の幅が狭くなる可能性があります。趣味や興味に合った娯楽を見つけるためには、地域のコミュニティに積極的に参加したり、オンラインでの交流を深めたりするなどの工夫が必要かもしれません。
地方都市は家賃や物価が安いイメージがありますが、場所によっては都会と同等かそれ以上の生活コストがかかる可能性があります。特に、地元産の食材や日用品が少ない地域では、都会から輸送コストがかかるため、価格が高くなる傾向にあります。
また、車の維持費や冬場の暖房費など、都会では発生しなかった出費が増える可能性もあります。
フルリモートワークは、人との直接的なコミュニケーションが減るため、孤独感を感じる人もいます。同僚とのランチや雑談など、オフィスでできていた気軽なコミュニケーションがなくなることを、つらいと感じる人もいるかもしれません。
また、地方移住によって友人や家族と物理的に離れることで、孤立感を感じる人もいるかもしれません。オンラインでのコミュニケーションを積極的に取ったり、地域のコミュニティに参加したりするなど、人とのつながりを維持する努力が必要です。
地方移住は、家族全員に環境の激変をもたらします。環境に適応するために少なからずストレスがたまり、家のなかに緊張したムードが漂うこともあるかもしれません。
さらに、車で移動しなければ娯楽が見つけづらい土地のような場合、家以外で落ち着く場所を見つけられず、感情を発散させづらくなってしまうことも考えられます。
移住をする際は、家族全員が納得しているのはもちろんのこと、移住後も、悩みなどはないか積極的にコミュニケーションを取ることが求められます。家族の絆が試されるといえるでしょう。
地方移住といっても、その形はさまざま。ライフスタイルや目的に合わせて、自分にとって最適な地方移住を実現させましょう。
数日から数週間程度、地方に滞在しながらリモートワークに取り組むスタイルです。普段の生活環境から離れ、新しい刺激を得ることができます。
自然豊かな場所でワーケーションを楽しんだり、地域のイベントに参加したりと、仕事とプライベートの両方で充実した時間を過ごせるでしょう。
また、移住前の下見として、短期滞在を利用する人もいます。
数ヶ月から半年程度、地方に滞在しながらリモートワークに取り組みます。短期滞在よりも長い期間、その土地の生活を体験できるため、その土地の気候や風土などをより実感しやすい移住です。
また、地域のコミュニティとの交流も深めやすいのが特徴です。
雪の降る地域や台風の上陸しやすい地域、観光シーズンに賑わいを見せる土地などは特に、その土地に長期間滞在できそうかどうか、事前のお試し移住で見極めておくことが重要といえるでしょう。
永住しながら、在宅で勤務をします。移住先の選択や住居の確保、家族の同意など、事前の準備が重要になってきます。
都会と地方都市の両方に拠点を持ち、状況に応じて行き来しながらリモートワークを行うスタイルです。都会の利便性と地方の魅力を両立させることができるため、ワークライフバランスを重視する人に人気があります。
ただし、二つの拠点を維持するコストや、移動の手間などを考慮する必要があります。
フルリモートワークで地方移住を実現させた人に、弊社キャリモは独自インタビューを実施しました。移住の理由や、生活コストの変化、移住に満足しているかどうかについてうかがっているため、ぜひ参考にしてみてくださいね。
エンジニアとして活動するIronoutaさん。
地方にある実家を相続し、ご家族で地方に移住されました。
トータルでの生活コストは、ほぼ変わらないとのこと。そのうえで移住に満足しているかを聞いてみると、以下のような回答が得られました。
「一番大きかったのは、都会で生活をするうえで感じていたストレスがなくなったことです。また、子どもがいるので、自然に恵まれた環境のなかで育ててあげられたのもよかったです」
フルリモートの事務として活動されているakimadoさん。
地方移住はパートナーの転勤がきっかけだったそうです。
「転勤が決まり、すぐに物件情報サイトで住まいを決めました。」
仕事については、求人サイトでフルリモートの仕事を見つけたそうです。トータルで見て、移住に満足しているかを聞いてみたところ、満足なさっているとのことでした。
「生活コストは上がりましたが、移住して満足しています。気に入っているのが、生活に必要な施設(スーパー・ドラッグストア・コンビニ・100均・病院)が全て徒歩圏内に揃っていることです。さらに、子供の習い事も全て歩いて通える範囲なので、送迎の必要がなく助かっています」
一般的に「地方移住」というと「都会に住んでいるときよりも不便になる」といったイメージが大きいもの。しかしakimadoさんのように、生活に必要な施設が全てコンパクトにまとまっている地方都市に移住すると、むしろ暮らしの利便性は高まることが分かります。
akimadoさんの場合はお子さんの送迎なども必要なくなったとのことで、時短にもなっているようですね。
農業パートをしつつ、NPO法人の事務員として活動されている勝又奈緒子さん。
30歳の頃、お子さんが生まれたことをきっかけに、パートナーの祖父母宅へ移住を決めました。
「もともと夫が、家族から”家を守ってほしい”と言われていたのは知っていました。夫の実家は歴史もあり、敷地もとても広いんです。私としても、あの家を守るのは意義深いことだし、自分たちにとってもメリットが大きいな、と思っていました。今後の暮らしを考えたときに、このまま関東で家を新しく買うのはもったいない。それなら……と思い切って、移住を決意しました」
生活コストも下がり、移住して後悔することはほとんどないそうです。
「仕事はインターネットで検索して見つけました。地方移住してみて感じるのは、いい意味で何もない、周りと比べる必要がない、情報に惑わされないことの心地よさです。四季を感じながら、ときには自然豊かだからこその悩みや恐怖を感じながら、手を掛けることに時間を割く暮らしが、自分にはとても合っていると感じます。特に雪国なので、雪が降る前の準備や降ってからの日々の生活は、都会では味わうことができません。実質的な年収などの条件以上に、常に心に余裕があり、子供に優しく声かけができる今の暮らし、自分が好きです」
フルリモートワークで地方に暮らす場合、快適で充実した生活を送るためには、いくつかの重要なポイントを事前にチェックしておくことが大切です。ここでは、フルリモートワークで地方移住する際に、特に注目したい5つのポイントを紹介します。
移住先の地域の雰囲気は、生活の質に大きな影響を与えます。
たとえば、田舎の自然豊かな環境を求める人もいれば、ある程度の都会的な利便性を求める人もいるでしょう。
事前に現地を訪れたり、地域の情報を収集したりして、自分に合った雰囲気の地域を見つけましょう。
移住先の気候は、日常生活に直接影響します。自分の好みや体質に合った気候の地域を選ぶことが大切です。夏の暑さや冬の寒さ、湿度や降雪量など、様々な要素を考慮する必要があります。
また、季節ごとの魅力を味わいたい人は、四季の変化が明確な地域を選ぶのもよいでしょう。
日本は地震や台風、豪雨など、様々な自然災害のリスクがある国です。移住先の災害リスクを事前に確認し、対策を考えておくことが重要です。ハザードマップを確認したり、地域の防災情報を収集したりして、安全な場所を選ぶようにしましょう。
地方都市の物価は、場所によって大きく異なります。日常的な買い物に欠かせないスーパーや商店の物価を事前にチェックしておくことが重要です。
移住前に、現地のスーパーや農協などを実際に訪れ、物価を確認しておくと安心です。
地方自治体によっては、移住者向けの補助金や支援制度を用意していることがあります。支援で多いのは、家賃補助や引っ越し費用の助成、起業支援など。申請しなければ受け取れないケースがほとんどなので、移住先の自治体のホームページや移住支援センターなどで、情報を収集しておくことをおすすめします。
また、国が実施する「起業支援金・移住支援金」については、必ずチェックし、申請しましょう。条件に当てはまる場合、世帯の場合は100万円以内(18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合は18歳未満の者一人につき最大100万円を加算)、単身の場合は60万円以内で都道府県が設定する額を受け取ることができます。
スムーズに移住生活を始めるためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。ここでは、地方移住とフルリモートワークを組み合わせる際の5つの注意点を紹介します。
地方移住とフルリモートワークを始める前に、その目的を明確にすることが大切です。自然豊かな環境で子育てをしたい、趣味や自己啓発に時間を充てたい、ワークライフバランスを改善したいなど、自分の目的を具体的に見つけておきましょう。
目的を明確にすることで、移住先の選択や生活スタイルの設計がしやすくなります。
地方移住は、自分だけでなく、家族や近しい人々にも大きな影響を与える決断です。配偶者や子供、親など、関係者の意見を十分に聞き、全員が納得したうえで地方移住を進めましょう。
地方在住&フルリモートの働き方についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
地方移住とフルリモートワークを組み合わせる際、フリーランスという働き方がおすすめです。フリーランスは、場所や時間に縛られずに仕事ができるため、地方移住との相性が良いです。また、複数の仕事を掛け持ちすることで、収入の安定性を高められる可能性もあります。
ただし、フルリモートの受け入れ体制が整っている企業はまだまだ少ないのが現状なので、自分で仕事を探すのは難しいかもしれません。そんな時はフルリモートに特化したフリーランス向けエージェントを利用すると良いでしょう。
弊社キャリモでは、フルリモートワークに特化した、フリーランス向けの案件を紹介しています。スキルや希望に合わせて、1日2〜3時間からの勤務もOK。報酬は全て時給で換算されるので、安定した収入が作れます。
フルリモートやフリーランスという働き方に理解のある企業を紹介するので、「地方移住をしたいけれど、まずはフリーランスとして経済的基盤を固めておきたい」といった方は、ぜひ活用をご検討ください。
フルリモートワークで地方移住を実現するには、メリットとデメリットを理解し、自分に合ったスタイルを選ぶことが大切です。移住先の雰囲気や気候、災害リスク、物価、支援制度などを事前にチェックし、目的を明確にしたうえで、家族とよく話し合いましょう。
また、正社員としての就職先が思うように見つけられない場合は、フリーランスとして働くことも検討してみましょう。フリーランスとして案件を獲得する際は、信頼できるエージェントを見つけることも重要です。
弊社キャリモは「キャリアを諦めない社会」というビジョンのもと、リモートで働きたい女性に向けた案件を多数ご紹介しています。
活かせるスキルは、カスタマーサポートや経理、秘書、事務などさまざま。正社員に近い形でチームに参画するような、ハイレベルな業務も多く、比較的高単価な案件が多いことも特徴です。
新しい環境で、自分らしい暮らし方と働き方を見つけてみてください。